新都近くの広場に敷かれたレンガは、夜だというのに彩り豊かなライトに照らされていた。冷たい風が木々を凪ぐのに合わせ、レンガを覆う小さな斑点が揺れる。
「うわぁ…………」
感嘆の声が上がった方へアーチャーが視線を向ければ、豊かな黒髪を揺らしながら辺りを見回す凛の姿。その髪はレンガと同じように周りのライトに照らされきらきらと輝いている。まるで髪が光を振り撒いているようだった。
「美しいな」
男から無意識に零れた言葉が耳に入ったのか、凛はくるりとこちらへ振り向き「そうね」と楽しそうに微笑む。多分、お互い美しいと思っている対象が噛み合っていない。
アーチャーがこれ見よがしに大きな溜息を吐くと、案の定凛は顔をしかめる。
「なによ。突然そんな溜息吐いて」
「いや何、君が大きな勘違いをしているようだから呆れたのだ」
「回りくどい言い方しないで、はっきり言いなさいよ」
何が言いたいのよ、とこちらを見据えるサファイアの瞳。アーチャーは仕方ない、と不満を露わにする少女へ向き直り口を開いた。
「私は君が美しいと思ったのだよ、凛」
飾り気のない、ストレートな言葉。それを耳にした瞬間、凛は辺りの電飾よりも顔を赤く染めぽつりと呟いた。
「……ばか」
end
2020.12.17 初出